膵臓がんは早期発見が難しく、見つかった時にはもう手遅れになっている場合もある恐ろしい病気です。
背中や腰などの痛みが続いていて整形外科などへ受診し続けていたが、いつまでも症状が改善しないので、念のために精密検査をしたところ『膵臓がん』だった・・・。こんなケースも見られるのが『膵臓がん』という病気です。
そこで今回の記事では以下の3つについて詳しくご紹介しようと思います。
・『膵臓がん』を根治するために一番大切なことは「早期発見」することが最も大事なことです。
・『膵臓がん』の主な症状や症状ごとにおこなわれる治療法を詳しく解説します。
・『膵臓がん』を早期発見する方法と初期症状などを詳しく解説します。
この記事を書いている私は、2018年の夏『ステージⅢの肺腺がん』と宣告されました。私の症状では手術によって『肺腺がん』を取り除くことは困難と医師より告げられ、その後約1年「放射線治療」と「化学療法」を続け、幸運にも今は経過観察となっています。実際にがんを体験した者として治療法などをお伝えします。
この記事を読んでいただくことで『膵臓がん』について、症状や治療法、早期発見の方法など、『膵臓がん』についての不安を抱えている方や、これから治療をおこなう方にとっては、とても重要な情報となると思いますので、ぜひ参考にしてください。
膵臓がんとは?
『膵臓がん』は膵臓という臓器にできる『がん』です。
膵臓がんの特徴に「早期発見が難しい」ということがあります。
膵臓は長さが20センチほどの細長い形をしていて、胃の後ろ側に位置しています。
位置する場所が胃の後ろ側で、お腹の奥深い位置にあるために、がんを発症しても発見しにくいことも多々見られるため、早期発見が難しい原因の1つともなっています。
※膵臓とは
参考動画:膵臓の構造と働き(膵液とホルモン)
早期発見が難しいことから、発見された時点で他臓器などへの転移が進んでいるケースも多く見られ、診断が告知された段階で、手術での治療ができる割合が約2割程度と、治療の難しい「がん」でもあるのがこの『膵臓がん』です。また、手術によって「がん」を切除できたとしても、術後の再発率が高く、術後の5年生存率は2割~4割とのデータもあります。
症状が発症すると、腹痛や膨満感が起こったり、腰や背中の痛みといったがんとはあまり関連が無いと思うような症状も起こります。
こういった症状は「がん」以外でも起こる場合もあるので、他の病気と思い、症状への対応をしているうちに、気がついたときには「膵臓がん」がかなり進行してしまっていたとうケースも見られます。
膵臓がんの死亡者数は『肺がん』『胃がん』『大腸がん』に次いで4番目に多い数です。2014年の統計データでは、約32,000人が膵臓がんでお亡くなりになったというデータもあります。
では次からは「膵臓がん」の治療法について詳しくご紹介していきます。
治療法はがんの進行の程度(ステージ1期~4期)によって決まります
膵臓がんの治療法は、医師より宣告された患者さんの「がんの進行の程度」によって決まります。この「がんの進行の程度」は『ステージ(病期)』という呼び名で分類されます。
この『ステージ(病期)』は「ステージ0期~ステージⅣ期」まであり、がんが早期に発見され、進行の程度が軽度である場合は小さい数字の「ステージ0期」「ステージⅠ期」と分類されますが、がんの進行程度が進むにつれて、ステージを分類する数字も「ステージⅡ期」~「ステージⅣ期」と大きくなっていきます。
この『ステージ(病期)』によって治療法が決まるのは、膵臓がん以外のがん治療においても用いられる方法です。
では、次からは、この『ステージ』「0期」~「Ⅳ期」は、各ステージごとにどのような状態なのかを詳しく解説してみようと思います。
「ステージ0期」「ステージⅠ期」はこんな状態です
「ステージ0期」は、がん細胞が膵臓の中にあって、膵臓と胆嚢をつなぐ膵管(すいかん)という小さな部位にとどまっている状態です。
「ステージⅠ期」は、がんの発症がまだ初期の段階であるため、がん細胞の範囲は膵臓内にとどまっていて、膵臓以外の他臓器やリンパ節への転移などは見つからない状態です。
この「ステージⅠ期」は、発症したがんの大きさで「ⅠA」と「ⅠB」の2つに分類されます。
発症したがんの大きさが、膵臓内に2㎝以下の場合「ⅠA」分類されます。がんの大きさが2㎝を超えているが、膵臓内にがん細胞がとどまっている状態は「ⅠB」と分類されます。
「ステージ0期」「ステージⅠ期」ともに、がんの発症が初期の段階のため、がんの大きさや範囲も小さく、他の臓器などへの転移も見られない状態です。
「ステージⅡ期」はこんな状態です
「ステージⅡ期」は発症したがん細胞の一部が膵臓の外に出てしまった状態です。さらにリンパ節への転移の有無で「ⅡA期」と「ⅡB期」の2つに分類されます。
リンパ節への転移が見られる状態を「ⅡB期」リンパ節への転移が見られない状態は「ⅡA期」と分類されます。また、発症したがん細胞の大きさは4㎝を超えている状態で、リンパ節へのがん転移が1~3か所認められる状態でもあります。
がん細胞は、膵臓の外に出てしまった状態ですが、まだリンパ節への転移のみで、腹部にある動脈(上腸間膜動脈・腹腔動脈)への転移などは見られません。
⇒ 腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)について詳しく解説します。
⇒ 上腸間膜動脈(じょうちょうかんまくどうみゃく)について詳しく解説します。
「ステージ0期」「ステージⅠ期」にくらべ、発症したがんの大きさも、範囲もやや大きくなっているのがこの「ステージⅡ期」の状態です。
ステージⅢ期はこんな状態です
膵臓がんの「ステージⅢ期」では、膵臓の中に発症したがん細胞の範囲が、膵臓の外まで及び、腹部にある動脈(上腸間膜動脈・腹腔動脈)へ転移が認められる状態です。
⇒ 腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)について詳しく解説します。
⇒ 上腸間膜動脈(じょうちょうかんまくどうみゃく)について詳しく解説します。
また、腹部の動脈以外に、リンパ節への転移も認められる場合もあり、膵臓以外の他の臓器への転移は見られないものの、がん細胞の範囲はやや広範囲にわたっている状態でもあります。
ステージⅣ期はこんな状態です
膵臓がんの「ステージⅣ期」は、膵臓の中で発症したがん細胞が、膵臓以外の他臓器への転移が認められる状態です。膵臓以外の臓器には「肝臓」「肺」「腹膜」などがあり、これらの臓器以外にも「大動脈」や「リンパ節」等への転移も認められる状態です。
がんの進行具合によっては、全身にがん細胞の転移が認められる場合もあるのがこの「ステージⅣ期」の状態です。『末期がん』の状態と呼ばれるのもこの「ステージⅣ期」です。
膵臓がんの代表的な治療法3つを詳しく解説します
膵臓がんの治療では「手術」「薬物療法」「放射線治療」の3つがおこなわれます。
発症したがん細胞が、膵臓周辺の他の臓器やリンパ節、動脈などへの転移などが認められず、発症が初期の段階で、手術による切除でがん細胞を取り除けると医師が判断した場合には「手術」による治療が選択されます。
ですが、手術によってがん細胞を切除した場合でも、切除後の再発を予防するために抗がん剤などの薬物療法を組み合わせた治療法が選択される場合もあります。
膵臓内に発症したがん細胞が、他臓器や動脈、リンパ節などへ広範囲にわたって転移が認められた場合、手術によってがん細胞を切除することが困難と医師が判断する場合があります。このような場合には、抗がん剤などの「薬物療法」と、がん細胞を焼失させるための「放射線治療」が選択されます。
また、がん細胞が膵臓以外の他臓器やリンパ節など、広範囲に転移が認められ、治療によって根治が困難であると医師が判断した場合には、痛みの緩和などを目的とした「薬物療法」が選択されます。
※「薬物療法」について詳しく解説します。
引用元:がん情報サービス
薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る
※放射線治療について詳しく解説します。
引用元:がん情報サービス
放射線とがん医療の関係
このように「膵臓がん」の治療では「手術」「薬物療法」「放射線治療」の3つの治療法がおこなわれますが、次からは、先ほどまでお伝えした『がんの進行の程度(ステージ(病期)』ごとにどのような治療法が選択されるのか詳しく解説してみようと思います。
「ステージ0期」「ステージⅠ期」と診断されたときの治療法
「ステージ0期」「ステージⅠ期」と診断されたときは、基本的に「手術による治療法」が選択されます。
膵臓がんの治療では、発症した「がん細胞」を手術によって切除する「手術」が最優先されます。
膵臓がんは早期発見が難しく、がんが見つかった時には、膵臓以外の臓器やリンパ節、大動脈などの血管への転移が進んでいるケースが多く見られます。
膵臓がんに限らずがんの治療において、がんを根治するということは、発症したがん細胞をすべて取り除く、もしくは消失させ、さらに「がん細胞」を再発させないということです。
「ステージ0期」「ステージⅠ期」は膵臓がんの初期の状態で、他臓器やリンパ節への転移が無い状態です。
膵臓がんを早期に発見することができて、状態が初期の段階であれば医師は「がんを手術によって切除可能」と判断し、「手術によってがん細胞を取り除く」という「手術での治療法」を選択します。
ですが、「ステージ0期」「ステージⅠ期」の状態で、膵臓以外への転移が認められなかった場合でも、医師の判断によって、手術後、補助療法として「放射線治療」や、抗がん剤を用いた「化学療法」が手術による治療と併用される場合もあります。
「ステージⅡ期」と診断されたときの治療法
膵臓がんの「ステージⅡ期」と診断されたときの治療法は、2つ選択されます。
1つめは「手術によってがん細胞を切除する」治療法です。
2つめは「抗がん剤を用いた化学療法」や「放射線治療」です。
この2つの治療法のどちらかを選択する際の目安となるものが「切除可能境界」というものです
この「切除可能境界」とは、膵臓の中で発症したがん細胞が、膵臓の周辺の血管やリンパ節へ一部転移が認められるものの、膵臓周辺の「肝臓」や「腎臓」などの他臓器への転移は認められない状態です。この状態であれば、手術によって「がん細胞」をすべて取り除ける可能性があると医師が判断し、手術による治療がおこなわれます。
ですが、手術によってがん細胞を取り除けると医師が判断した場合でも、手術の前に「術前補助療法」という治療をおこないます。ここでは「放射線治療」や「抗がん剤を用いた化学療法」がおこなわれます。
膵臓がんは膵臓の周辺にある血管やリンパ節を通して、膵臓の周辺にある「肝臓」や「腎臓」「肺」などに転移しやすい特徴があります。
手術によって「がん細胞」を取り除いたと思っても、実は目に見えないがん細胞が残っていて、後に再発する可能性もあります。このような目に見えない場所にある小さながん細胞を根治する目的としてこの「術前補助療法」という治療がおこなわれます。
この治療法後に検査をおこない、再度医師が「手術」でがんを根治できると判断した場合に「手術による治療法」がおこなわれます。また医師が「術前補助療法」実施後の検査結果から「手術による治療」が困難と判断した場合には「放射線治療」や「抗がん剤を用いた化学療法」による治療がおこなわれます。
「ステージⅢ期」と診断されたときの治療法
「ステージⅢ期」と診断されたときの治療法も「ステージⅡ期」と同じく、2つの方法が選択されます。
1つめは「手術によってがん細胞を切除する」治療法です。
2つめは「抗がん剤を用いた化学療法」や「放射線治療」です。
この2つの治療法のどちらかを選択する際の目安となるものが、「ステージⅢ期」でも「ステージⅡ期」と同じく「切除可能境界」です。
切除が可能と判断される際の判断基準は、膵臓周辺にある「動脈」や「肺」「肝臓」などの他臓器への転移が認められず、転移の範囲がリンパ節や血管など、目に見える範囲にとどまっている場合です。
ですが、この状態であっても、目に見えないがん細胞が残っている可能性を無視することはできないので、「ステージⅡ期」と同じく手術の前に「術前補助療法」をおこない、さらに「ステージⅢ期」では、「術後補助療法」という再発予防のための「抗がん剤を用いた化学療法」や「放射線治療」をおこなう場合もあります。
「切除が不能」と判断された場合には、「抗がん剤を用いた化学療法」や「放射線治療」などの治療法がおこなわれます。
「ステージⅣ期」と診断されたときの治療法
膵臓がんの「ステージⅣ期」では、「切除不能(他臓器への転移あり)」と判断され、治療法は「手術」ではなく「抗がん剤を用いた化学療法」や「放射線治療」がおこなわれます。
がん細胞が「膵臓」以外の「肺」や「腎臓」などの他臓器以外にも、広範囲にわたってしまった「末期がんの状態」と医師が判断した場合には、がんの根治を目的とした積極的な治療よりも「痛みの緩和」など、患者様自身の生活を支援目的が主となる治療がおこなわれます。
膵臓がんを早期発見するために大切なことをお伝えします
膵臓がんは早期発見が難しい「がん」です。
そのために、発見されたときには、がんがかなり進行してしまった状態になっている。こんなケースも多く見られるのも、膵臓がんの特徴です。また、膵臓がんと診断された段階で、手術によって治療をできると医師に判断される患者さんはわずか2割程度とも言われています。さらに、手術によってがん細胞を切除した患者さんでも、手術後の生存率(5年)は2割~4割と言われています。
膵臓がんのがん細胞は、手術によって切除可能となる大きさ(がん細胞が1~2㎝)になるまでには5年以上の時間を要するとも言われています。この状態になる前に「膵臓がん」を発見できれば「がんの根治」を目指すことも可能です。
そこでここからは「膵臓がんを早期発見」するためにとても大切になるポイントをご紹介しようと思います。
尿の色が褐色になったら要注意です
膵臓にある「膵頭(十二指腸に近い部位)」にがんが発生すると、黄疸やビリルビン尿という濃い褐色の尿が出るようになります。
これは、膵頭部にできたがん細胞が胆管(胆汁の流れ道)を圧迫したり、胆汁の流れ道である胆管にがん細胞が浸透し圧迫することで起こる症状です。
腹痛や背部痛などの痛みがでたら要注意です
膵臓の端の部位である「膵体尾部」にがん細胞が発生すると、膵臓の近くの神経にがんが浸透することで「腹痛」や「背中の痛み」などの症状が起こる場合があります。
このようなことが起こると、整形外科に通う方が殆どですが、状態がいつまでたっても改善しないので、精密検査をおこなったところ「膵臓にがんが発生していた」というケースも見られます。
食欲不振や急な体重減少が起こったら要注意です
急な体重減少が起こったり、原因不明の食欲不振が続いたら要注意です。
こういった症状が見られた場合、すでに「がんがかなり進行している」ケースも見られますので、症状が続くようであれば、検査などを受けるようにしてください。
ここでは「膵臓がん」を早期に発見する際にとても大切になることをお伝えしました。もしもこれを読んだ「あなた」に1つでも思い当たることがあるのなら、少しでも速くに検査を受けてください。
最後に「膵臓がん」の症状や早期に発見するためにとても役に立つ動画をご紹介します。
※参考動画 ⇒ 放置厳禁!知らないと後悔するすい臓がんの危険な症状とは?
ここまでお伝えしてきた「膵臓がんの治療法」についてまとめます
膵臓がんの治療法は大きく分けて「手術」「薬物療法」「放射線治療」の3つです。
発症したがん細胞が他臓器などへの転移が見られない場合には「手術」による治療がおこなわれます。
がん細胞が他臓器や動脈などへ、広範囲に転移が見られる場合には、手術によってがん細胞をすべて取り除くことが困難になるので「薬物療法」や「放射線治療」によって癌細胞を焼失させる治療がおこなわれます。
がん細胞の転移が広範囲になっていて、治療によってがんを根治させることが困難と医師が判断した場合には、痛みの緩和などを目的とした「薬物療法」がおこなわれます。
膵臓がんをする上で最も大切なことは「早期発見」です。また膵臓がんは早期発見がとても難しいがんの1つでおあります。
「尿の色が最近変わった」「腹部や背部の痛みが続いている」など、膵臓がんと関係がないと思われる症状が、実は膵臓がん発症の始まりだったというケースもあります。
膵臓がんの早期発見について、とても参考になる動画のURLを以下に記載しますので、ぜひ参考にしてください。※参考動画 ⇒ 放置厳禁!知らないと後悔するすい臓がんの危険な症状とは?
膵臓がんは早期発見が難しく、発見されたときにはすでにかなり進行した状態であるケースも多く、治療によって根治が困難ながんの1つです。ですから、今回の記事では治療法を大きく3つご紹介してきましたが、早期発見も大事な治療法の1つでもあることを最後にお伝えします。