⒈50歳男性です。会社の健康診断で【早期胃がん】と診断されました。どのような治療方法を選択すれば良いでしょうか。
⒉胃がんのステージ3と診断されました。この段階までがんが進行したらどんな治療をすれば良いでしょうか。
⒊家族が胃がん(ステージ3)で治療をしています。治療の内容は放射線治療をおこなっていますが、これは一般的な治療法ですか?
胃がんを発症された方で、これから治療を開始される方や、または、もうすでに治療をしている方には「ほんとうにこの治療方法で大丈夫なの?」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
私は、2018年の夏に【肺腺がん】【ステージ3】と診断されました。がんが数か所に転移していたために、手術での治療が困難と診断され、放射線と化学療法による治療をおこないました。そこで今回の記事では、はじめて胃がんと診断された方や、胃がんが再発してしまった方へ向けて、胃がんの治療法について詳しく解説します。
今回の記事を読むことで、胃がんの治療方法に疑問や不安を感じている方が、胃がんではどのような治療方法があるのか、また、胃がんの進行度合い(ステージ)や再発した場合ではどのような治療が行われているのかを知ることができます。ぜひ参考にしてみてください。
胃がんの代表的な治療法は主に3つです
がんの治療には様々な方法がありますが、【胃がん】の代表的な治療法は主に【外科手術(開腹手術・腹腔鏡手術)】【内視鏡切除】そして【抗がん剤治療(化学療法)】の3つです。
【外科手術】は、胃にあらわれたがん細胞や胃以外のリンパ節などへ転移したがんを切除する治療法です。
【内視鏡切除】では、胃にあらわれたがん細胞が比較的小さい場合や、胃以外に、リンパ節などへの転移の可能性が低いと判断された場合に、内視鏡を用いてがん細胞を切除する治療法です。
【抗がん剤治療(化学療法)】はがん細胞を消す、もしくは増えるのを抑える抗がん剤を、内服や点滴などにより全身にがん細胞に対する薬剤を到達させる治療法です。
では次からは、この3つの代表的な【胃がんの治療法】について詳しく解説してみようと思います。
胃がんの治療で基本となるのが【外科手術】です
外科手術は、胃にあらわれた「がん細胞」を切除することによってすべて取り除き、がんの治癒を目的とする
治療法です。
切除する範囲はがんに侵された胃の部位と、その周辺にあるリンパ節(ガンが転移する可能性のあるリンパ節)が主になりますが、がんの進行度合いと、がんに侵された部位や範囲によって、切除による治療法は変わります。
この胃がんの外科手術には4種類の治療法があります。
胃全摘切除
胃の上部ががんに侵された場合に、胃をすべて切除する治療法です。転移の疑いがある場合には胃のまわりにあるリンパ節の切除もおこなわれます。胃がすべて無くなってしまうので、切除後のフォローがとても大事になります。
幽門側胃切除
胃の下部ががんに侵された場合、胃の出口側に近い下の部位である「幽門側(ゆうもんがわ)」を3分の2、もしくは5分の4切除する治療法です。
胃がんの切除では多くおこなわれる外科手術です。
噴門側胃切除術
胃の入り口側に近い部位である「噴門側(ふんもんがわ)」ががんに侵された場合、胃の上部を3分の1から4分の1程度切除する治療法です。
「噴門側(ふんもんがわ)」を切除すると、術後に「逆流性食道炎」を起こしやすくなる場合があるようです。
胃部分切除術
胃の出口付近の部位である「幽門側(ゆうもんがわ)」の一部分を残して、胃を切除する治療法です。
内視鏡治療
内視鏡を使って、胃の中のがんを切除する治療法です。
※内視鏡とは?
参照元:医療法人社団 健心会 神戸ほくと病院
胃がんを発症した際、発見が早期であり、がんの腫瘍の大きさが「2㎝以下」である場合、胃以外の臓器やリンパ節にがんが転移している可能性は比較的低いために、内視鏡を使って、がんの腫瘍を切除します。
胃がんを切除した部位は顕微鏡などで、がんが残っていないか確認します。必要に応じて追加で手術が行われる場合もあるようです。
手術後に合併症などが見られなければ、1週間前後で退院できます。
抗がん剤治療(化学療法)
胃がんの細胞の増殖を抑える、またはがんの細胞を消す、縮小させる効果が期待できる薬剤(抗がん剤)を、内服や点滴で体に投与する治療法です。胃がんの治療では多くおこなわれる治療法です。
外科手術で胃がんの腫瘍を取り切れなかった場合や、胃以外の臓器やリンパ節などへの転移が視られた場合、さらに外科手術後に再発が認められた場合にも、この治療法が選択されます。
この【抗がん剤治療(化学療法)】は主に2つの方法でおこなわれます。
「補助化学療法」
「外科手術」を治療の中心として、その治療法の効果を高める目的でおこなわれる治療法です。
この「補助化学療法」には、手術の前におこなう治療法「術前補助化学療法」と手術の後におこなわれる治療法である「術後補助化学療法」があります。
「術前補助化学療法」
手術をおこなうまえに「抗がん剤治療」をおこなうことで、胃がんを小さくして、胃がんの根治を高める目的でおこなわれる治療法です。
「術後補助化学療法」
手術がおこなわれた後、術後1年程度を目途に抗がん剤治療をおこなうことで、胃がんの根治や、5年生存率の上昇を目的としておこなわれる治療法です。
「根治的化学療法」
手術だけでは胃がんの根治が難しいと判断された場合(ステージⅣの状態)や転移が見られる場合に、抗がん剤で胃がんの根治を目指す治療法です。
がんの進行度合い「ステージ(病期)」によって治療法は変わります
胃がんの治療法は「胃がんがどれぐらい進行しているのか」や「患者さんのその時の身体の状態」などから医師が検討し、判断します。
がんの進行度合いは「ステージ(病期)」として表記され、胃がんの進行度合いを表記する場合には、胃がんの発症が早期である場合には「ステージⅠ期」として表記されます。胃がんに羅漢した範囲が広範囲になっている場合や、他の臓器などへの転移などが認められる場合には「ステージⅡ~Ⅲ期」と表記されます。
そこでここからは、胃がんの進行の度合いによってどのような治療法が選択されるのかについて解説していこうと思います。
胃がんの進行の度合い「ステージ(病期)」について
胃がんの病態が進行している状態は「ステージ(病期)」と呼ばれています。
この「ステージ(病期)」は「ステージ1」から「ステージ4」まであります。胃がんと診断されたときに医師から「ステージ」が告知されます。
「ステージ4」は「末期がん」の状態と呼ばれることもあり、余命が数か月の状態で、治療法が無い状態です。
「ステージ1A・B」
「ステージ1」は「1A」と「1B」に分けられます。どちらの状態も、胃の表面の粘膜に胃がんが認められる状態で、再発の可能性は極めて低い状態です。
「ステージ2A・B」
「ステージ2」では、胃がん再発の可能性も出てきます。胃がんがリンパ節へ数か所転移が見られる状態です。
「ステージ3A・B・C」
「ステージ3」では目に見える胃がんは切除できても、目に見えない部位にも胃がんが残る場合が多くあり、再発の可能性が高い状態です。
この状態では、通常の手術によって胃がんを取り除く手術以外にも、再発予防の治療も重要となります。
「ステージ4」
この状態まで胃がんが進むと、まず、抗がん剤などで胃がんの縮小を目指します。胃がんがある程度縮小した場合に手術をおこないます。
治療の主は、抗がん剤や化学療法となります。
胃がんの状態が早期の場合(ステージ1A・ステージ1B)の治療法
胃がんの進行が早期の場合(ステージ1A・ステージ1B)には、内視鏡を用いた手術による治療がおこなわれます。
「ステージ1A」での胃がんの状態は、胃の表面の粘膜層という部分にとどまっているので、内視鏡での切除によって胃がんを取り除くことが可能です。
※内視鏡とは?
参照元:医療法人社団 健心会 神戸ほくと病院
「ステージ1B」での胃がんの状態は、大部分は胃の表面の粘膜層にとどまっていますが、一部リンパ節への転移や、粘膜層の下部にある粘膜下層まで達している場合もあります。
この場合も、基本内視鏡による切除によって胃がんを取りのぞくことが可能です。
がんが進行している場合(ステージ2)の治療法
胃がんの状態が「ステージ2」まで進行すると、胃がんが胃の表面の粘膜層からさらに深く浸透します。
胃は最表面が「粘膜層」粘膜層の下が「粘膜下層」その下が「筋層」で最下層が「漿膜」と呼ばれています。
「ステージ2」では胃がんは「粘膜下層」まで達し、リンパ節への転移が数個ある状態か、胃がんが、胃の最下層面である「漿膜」まで達し、リンパ節への転移は無い状態です。この状態では、開腹による手術による治療がおこなわれます。
「ステージ2B」まで胃がんが進行すると、胃がんが粘膜下層まで達し、リンパ節への転移が10か所以上見られる状態か、胃がんが胃の最下層である「漿膜」を超えて、胃から腹腔内に達している状態です。
この状態でも、開腹による手術による治療によって胃がんを取り除きますが、再発の可能性もあります。
がんの転移が多く見られる場合(ステージ3)の治療法
胃がんの「ステージ3」では、目に見える胃がんは切除によって取り除きますが、目で確認できない箇所にも胃がんが多く残る場合が多く、再発の可能性も高い状態です。
通常は開腹手術で治療をおこないますが、それと合わせて、再発した場合に備えての予防治療もおこないます。
この「ステージ3」では、胃がんは胃の筋層まで達し、リンパ節へのがんの転移が10個以上ある状態か、胃がんが胃の最下層である漿膜まで達し、リンパ節への転移が数個以内という状態です。
「ステージ3」でも「ステージ3B」や「ステージ3C」では、胃がんが胃以外の腹膜まで浸透している状態や、リンパ節への転移が10個以上と、がんの転移が進んだ状態です。
この状態では、開腹による手術での治療だけでは再発の可能性が高く、手術以外にも「抗がん剤」での治療や、免疫療法などの「化学療法」がおこなわれる場合もあります。
再発の可能性が高いために、「ステージ3」では再発予防治療が重要となります。
【胃がんの治療法】についてお伝えした内容を最後にまとめます
ここでもう一度、【胃がんの治療法】について、ここまでお伝えしてきた内容をまとめてみます。代表的な治療法は以下の3つになります。
⒈外科手術
外科手術のメリットは、医師が目視によってがんを切除できることです。切除によって胃がんを全て取り切れれば再発の可能性も低くなります。胃がんの治療法としては最も代表的な治療法です。
ですが、目に見えない範囲までがんが広がってしまった場合には再発のリスクもあります。
⒉内視鏡治療
胃がんの発症が早期で、がん細胞が胃の表面などの一部に認められる場合には、内視鏡によって胃がんを切除します。
内視鏡治療のメリットは、切開する箇所が小さな範囲で済むために、患者さんへの負担が少なく済むことです。ですが、この治療法は早期の胃がんにのみ適用される治療法です。
⒊抗がん剤治療(化学療法)
胃がんの進行がかなり進んだ状態(ステージ3~)では、外科手術を行う前にある程度、がんの腫瘍を抗がん剤によって小さくする必要があります。
この段階までがんが進行すると、再発の可能性も高くなります。
胃がんの治療方針については、まず最初の診断で、医師から「ステージ(病期)」といったものが告げられ、その「ステージ(病期)」にあった治療法が選択され、開始されます。
がんの治療で最も大切なことを最後にお伝えします
胃がんに限らず、がんの治療で最も大切なことは「早期発見」「早期治療」です。胃がんも早期に発見することができれば少ない負担でがんを切除によって取り切ることができ、再発の可能性を低く抑えることができます。
ですが、発見が遅れ、ある程度がんが進行してしまうと、治療による体への負担も大きくなり、再発の可能性も高くなります。
胃がんの治療法については、今回お伝えしてきな内容を参考にしていただくことと、日ごろから、定期的に健康診断を受ける。また、がんを発症する原因となること(喫煙など)は避けるなど、日々の生活習慣にも気を配ることも大切です。